創始者フォンタナ:オリジナルのモバイルマン
Meet the man behind the brand
ジョヴァンニ・フォンタナというのは、よく耳にする名前ではありません。まるで彼が作り上げたブランドや、彼が作ろうとしていたバッグと同じように。ただフォンタナは控えめで見識にとんだ人であった反面、強い意志を持っていました。
1900年代初頭に生まれたフォンタナは、革製品の代理店としての経験からラゲージで快適に旅をすることの重要性に着目していました。そして1930年代ヨーロッパ中を、とりわけパリやウィーンを訪れオートクチュールの優雅さを目の当たりにした彼は、1937年ミラノへ戻るとすぐさまヴァレクストラを立ち上げます。この旅とオートクチュールという2つのテーマは、創業の一日目からヴァレクストラのDNAとして組み込まれたのです。
当時すでにたくさんのアイデアを持っていたフォンタナですが、レザーグッズを作るスキルを持っていなかったため、友人であるルシオ・“ジノ”・モスカをパートナーにします。そして、彼が作りたい優雅で機能的なバッグを開発するためサンバビラ通りにアトリエ兼用のブティックを構えると、毎日通りを行き交う人々を眺めながら、ひたすらスケッチを描き、プロトタイプをつくり、改良に改良をかさねながら製品を生み出すようになっていったのです。
その結果、彼らの設計したハンドバッグは新しい世界観を持つようになりました。それがPresent continuous《現在進行形》の始まりであり、常にタイムリーで常に必要とされるデザインへの欲求の始まりです。
第二次世界大戦終結から復興していく経済の中で、フォンタナは活発に移動する人々のライフスタイルにふさわしい製品を提案することでヴァレクストラの礎を築きました。ミラノという街の持つ生真面目さと華やかさのなかにミラノ流のコンテクストを見つけたのです。
1954年、フォンタナのつくった24時間ブリーフケースは、機能性と洗練度を競うリナシェンテのコンパッソドーロを受賞。1958年には、馬蹄型のコインケースで特許を取得、革小物を人間工学的でエレガントなアイテムに変貌させました。また1961年には48時間用バッグとして親しまれているアビエッタ・トラベルを開発。1泊旅行を想定したバッグを生み出しました。そして1968年に発表された傑作トリックトラックは、20世紀のデザイン・アイコンとなっています。
創業からほぼ一世紀を経た現在、フォンタナのコンセプトは、マルチファンクションのバムバッグからありとあらゆる小物にいたるまで、ヴァレクストラのデザインに受け継がれています。